2012年7月2日月曜日

エコノミークラス症候群

健康な人間でも、連続一〇時間を超えるフライトになると身体がつらい。近年では、日本からニューヨークなどアメリカ東海岸や、ロンドン、パリなどヨーロッパまで無着陸で飛行できるようになり、13-14時間の飛行になることも珍しくない。乾燥した機内で身動きもままならない狭い席で長時間座り続けていると、水分不足・運動不足に陥り、「エコノミークラス症候群」になると騒がれている。

エコノミークラス症候群とは、血流が停滞して起きる血行障害で、一九六八年に欧米の研究者によって発表された。飛行中は気圧が〇・八気圧(一五〇〇メートル級の山に登っているのと同じ状態)程度に薄くなる上に、身体を十分に動かさないため、下肢を流れる静脈に固まった血(血栓)ができるが、飛行機を降りて歩き出すと血栓が流れ出して血管に詰まる。詰まる場所によって症状が異なるわけで、肺に詰まっての呼吸不全や心肺停止、心臓の血管では心筋梗塞、脳の中なら脳血栓の発作を招く。兆候としては、足のむくみに表れる。

同じ飛行機でもファーストやビジネスクラスはスペースにも余裕があり、エコノミー席の乗客に被害が集中することから、「エコノミークラス症候群」と呼ばれているわけだ。

身体が堅くなってきた五〇歳以上の、肥満タイプの人に起きやすい。英国の新聞によれば世界で年間二一人ほどがこれが原因で命を落としているとのことだが、日本であまり知られていなかったのは、皮下脂肪の多い欧米人に多いとされてきたからだ。ところが、成田空港でも同空港クリニック開設以来の死亡者四六人の死因をあらためて分析してみたら、二五人が該当したという。

エコノミークラス症候群にならないためには、小刻みに水分を補給することと、身体をなるべく動かすことで、専門家は一時間に一回程度、軽く屈伸や運動することをすすめている。

確かに、トイレに立つおりに機内を一周してしまうとか、非常口辺りのスペースのある場所で屈伸運動すると、身体が楽になる。イスに座ったままでも、カカトの上げ下げを繰り返したり、体をねじってみるだけでも効果的だ。用意のよい友人に、竹踏みの竹を持参する人を知っているが、足裏のツボを刺激して実に気持ちがよいそうだ。