2014年9月4日木曜日

バブルを演出したマルチプル

「将来企業が生み出すことになるキヤツシューフローを予想して、これをもとに企業の価値を算出し、株価を導き出す」という考え方は当然のことながら、企業とは生き物であり、将来も事業を継続していくということがベースとなっています。こうしたことからDCF法や収益還元法は、ゴーイングーコンサーン(Going Concern「生きたまま進む」との前提)に基づく企業評価と言っています。

これに対して、純資産株価は、静態的に今の時点での企業の価値を出すものです。これは、今、企業を清算して個々の資産に切り売りしていった場合、いくら残るかという清算価値に近いものになります。「将来を予想して決める。現在の静態的な価値によっては決定しない」株式を評価する時のこのスタンスは、実はわれわれがものごとを決める時の考え方につながるようなところもあります。

たとえば、外資系の投資銀行に勤めていますと、よく若い人の進路についての相談を受けることがあります。このまま投資銀行を続けていこうか、あるいは転職しようかといった悩みを同じ会社の若い人から持ちかけられることも多いのですが、なかには取引先の企業の幹部の方からの相談もあります。「うちの息子が就職先として役所に行くか、外資系かで迷っているので一度会って相談にのってやって欲しい」といった内容です。

若い人が悩む一つの要因は会社によって年収が違うことです。行きたい先の年収が高いとは限りません。たしかに就職先(あるいは転職先)を決める際、そこが当初いくらの年収を払ってくれるかは重要なファクターです。しかしもっと重要なのはそこであなたがどれだけ能力を磨くことが出来、実力を高められるかです。その結果、あなたの将来の年収は大きく変わってきます。

私白身、外資系に移ると決めた時、外資系企業四社からオファーを受けました。結果的には「保証年収」という条件だけで見ますと一番低いところを選びました。一番高く条件を提示してきたところの約八分の一でした。ただし、面接の時には上司に当たる人とこの点だけは確認しました。「この提示された数字はあくまでも最低限であって、実績を上げたらきちんと年収も上げて欲しい」