2016年3月4日金曜日

バブル崩壊による地価下落

土地本位制はわが国経済・金融システムの根幹であり、それはわが国の金融システムにおいて間接金融が主流をなしていることと裏腹の関係にある。バブルの発生・崩壊によってその基本が乱れたために、わが国の金融危機は起ったといってよい。わが国の金融危機の最大の原因は、そういう意味で地価下落である。

バブル崩壊による地価下落はバブル発生の反動でもあるから、金融にとっては自業自得という面もあるのだが、八年続きの七割を上回る地価下落ともなると、バブルを超えたわが国経済社会の構造変化を反映していると考えざるを得ない。そういう意味では、今や金融部門は地価下落の脅威を被る立場になっている。

そのことは不良債権問題に止まらず、わが国の金融システムに大きな問題を投げかけている。二十一世紀初頭におけるわが国金融の最大の課題は、ビッグバンなどということではなく、じつは上地本位制からの円滑な脱却なのである。今や、土地はもはや価値を保蔵するものとして国民の信頼を得ていない。この傾向は、わが国の人口の長期的減少もあって今後も続くだろう。そうなると、土地は金融活動の媒体として機能しなくなり、上地本位金融制度は維持できなくなる。最近の貸渋りにその発端が見られる。地価下落による土地担保不足から、金融活動の媒体の量が不足してしまったのだ。

江戸中期に新井白石は、悪貨を駆逐し物価騰貴を抑えるため、貨幣の質を高めた。その結果通貨供給量が減少し、不況が起ったという。全く事情は違うが、土地本位制において地価が下落することにより、通貨減少という意味では同じ現象が起っている。土地本位金融制度が機能障害を起こしているのである。

実はこのような問題はバブルの発生とも密接な関係を持っている。経済の発展に伴い、金融活動が飛躍的に増大しているにもかかわらず、土地という極めて限られたものが取引の尺度となっていたのである。そうなると、貨幣の悪鋳を続けなければ、経済は回らない。それが土地の騰貴であった。「日本では、過剰流動性の洪水が上地に集中する」のは、そのような事情があるからである。